自然な肌色の作り方【人物イラスト・絵画用】

色づくり

 自然な肌色をうまく表現できるかどうかは、人物イラストや絵画の完成度を左右すると言っても過言ではありません。

特に初心者の方にとって、肌色は”ピンクっぽいベージュ”で済ませがちですが、実際には黄み・赤み・青みなど微妙なバランスが必要です。

結論から言うと、自然な肌色を描くには「肌のタイプを理解し、光と影を意識しながら、ベース・中間色・影色を意図的に使い分ける」ことが大切です。

この記事では、アナログ絵の具からデジタルまで幅広く対応しながら、混色レシピや肌色表現のポイントを体系的に解説していきます。

人物をもっと魅力的に描きたい方、自分の色選びに自信を持ちたい方は、ぜひ最後まで読んでください。

肌色ってどう作る?基本の色の組み合わせと理論

肌色とは、単なる”うすいベージュ”ではありません。人間の肌には、血色、皮膚の厚み、光の反射などさまざまな要素が影響しています。

そのため、色を作るときは「赤(血色)」「黄(皮膚)」「白(明度)」を基本に、必要に応じて”青や緑”などを少量加えることで、深みやリアリティが生まれます。

色相・明度・彩度の三属性を意識することで、肌色に奥行きが出ます。例えば、色相は血色や日焼け具合を、彩度は健康さや透明感を、明度は照明や年齢の印象に影響します。

たとえば、肌のベースを作る場合:

  • 赤:カドミウムレッド、クリムソンレーキ
  • 黄:イエローオーカー、ナポリイエロー
  • 白:チタニウムホワイト を中心に混ぜ、必要に応じてウルトラマリンブルーやバーントシェンナを微量足すことで、冷たさや温かみを調整できます。

肌色を作る際に意識したいのは、単色ではなく”層”で表現すること。

まずベースカラーを塗り、次に中間色で血色を補い、影の色を少しずつ加えていくと、フラットではない、生きているような肌に仕上がります。

光源の方向を考えながら、陰影を置く位置にも注意しましょう。

イエローベースとブルーベースの肌色の違いとは?

日本人を含むアジア系の多くはイエローベースですが、中にはブルーベースの肌色の人もいます。

イエベ肌は黄みが強く、日焼けしやすい傾向があります。一方、ブルベ肌は赤みや青白さがあり、透明感を感じさせることが多いです。

イラストで表現するときは、イエベ肌には”ナポリイエロー”や”バーントアンバー”、ブルベ肌には”ローズマダー”や”コバルトブルーを極微量”などを使って差を出します。

ブルベは彩度を抑えつつ、青みを活かすことで清涼感を出すことができます。

また、イエベ・ブルベに応じて、ハイライトの色味も変えるとより自然です。イエベなら暖かいアイボリー系、ブルベなら青白い乳白色がおすすめです。

大事なのは、「髪・服・背景」との調和です。同じ肌色でも、隣接する色によって印象が変わるため、必ず周囲とのバランスを見ながら調整しましょう。人物だけでなく、空間全体を意識した色作りが必要です。

絵の具で作る!自然な肌色の混色レシピ集

実際にアナログ絵の具を使う方のために、肌色の基本レシピをご紹介します。以下の配合は一例であり、使用する画材の種類や紙の白さ、光の強さによって見え方は変わります。

■ 基本の肌色レシピ(標準肌)

初心者でも使いやすい、自然な肌のベース色です。 例えば「やや黄みがかった日本人の平均的な肌色」を描きたいときに使います。

  • ナポリイエロー:2(肌の黄色味)
  • カドミウムレッド:1(健康的な血色感)
  • チタニウムホワイト:2(明るさを調整) これにウルトラマリンをほんの少し混ぜると、影の部分に深みが出て立体感が出やすくなります。

■ 色白タイプ

色白の人物や、透き通るような肌の質感を描きたいときに。 赤ちゃんや女性キャラクターなどにおすすめです。

  • チタニウムホワイト:3(明るさを最優先)
  • ナポリイエロー:2(血色をほんのり感じさせる)
  • ローズマダー:1(ほのかなピンクのニュアンス) より透明感を出したいときは、コバルトブルーをごく少量加えると、青みが出て「冷たいけど美しい肌」に仕上がります。

■ 日焼けタイプ

元気で活発な印象や、夏に焼けた肌を描くときに。

  • バーントアンバー:2(深い茶系の土っぽさ)
  • カドミウムオレンジ:1(明るい焼け感)
  • チタニウムホワイト:1(明度を整える) 少しビリジャンやオリーブグリーンを混ぜると、リアルな”くすみ”が加わり、より自然な日焼け肌になります。

透明水彩では、重ね塗りの計画がとても大切です。下層に明るめのベースカラーを塗った後、透明度のある中間色をうすく塗り重ねることで、自然な立体感と肌のツヤが表現できます。

デジタルイラスト編:肌色のおすすめカラーパレット

デジタルで肌色を作る場合、HSB(色相・彩度・明度)で調整しやすいのが特長です。RGBやHEXコードも使えるため、配色の再現性も高く、カラー管理がしやすいのがメリットです。

 

※ 例:Photoshopでの基本肌色(RGB)

R:255 G:224 B:198(HEX:#FFE0C6) 明るめの標準肌として使いやすいベースカラーです。

影を加える際は、「単に明度を下げる」のではなく、「色相を少しシフトさせる」ことで自然さが出ます。影には、ややグレイッシュなラベンダー系(例:#B8A1C6)を薄く重ねることで、立体感と清潔感の両方を演出できます。

おすすめの手法は、

  1. ベースカラーを広範囲に置く
  2. 血流が多い部分(頬、耳、手指など)に赤系を加える
  3. フォーカスポイント(目元、口元)に中間色で陰影を入れる
  4. 首元や顎下には、グレー系を加え立体感を強調 という順に段階を分けて塗っていくことです。

CLIP STUDIOやProcreateなどのツールでも、上記の数値や配色方法は共通で使えます。肌の色調に応じてレイヤーモード(オーバーレイ、乗算、焼き込み)を切り替えることで、さらに自然な肌の質感が出せます。

年齢や性別による肌色のバリエーションと描き分け方

年齢や性別によって、肌の血流・油分・ハリが変化するため、肌色表現にも違いが必要です。

赤ちゃんは肌の下に血液が透けるような薄いピンク色が特徴です。明度高めで赤みを強くし、ツヤを多めに描くことで「柔らかさ」を演出できます。

20〜30代の女性は血色がよく、ピンクベージュ系が基本。ツヤと透明感を意識すると魅力的に映ります。

男性の場合は、血色よりも色味を抑えたマットな印象を出すことで、落ち着いた雰囲気になります。ナポリイエロー+バーントアンバーの組み合わせが相性良好です。

40代以降の中高年では、くすみや乾燥が加わるため、影の色にグレーや紫を取り入れると、年齢感のあるリアルな印象に仕上がります。

日焼け肌・色黒肌・色白肌の自然な表現テクニック

色黒肌を描く際、単に明度を下げるだけでは「黒ずみ」になってしまうため注意が必要です。赤茶系(バーントシェンナ+イエローオーカー)を基調に、グリーンをわずかに足すと深みが生まれます。

日焼け肌は、肩や鼻先、耳など部分的に赤みを足すと、リアルな「焼け感」が演出できます。紫外線による赤みやくすみを、彩度と補色の調整で描き出しましょう。

色白肌では、ピンク系にほんの少し青やグレーを足すことで、透けるような透明感が生まれます。首元や瞼に青グレーを入れると、寒色系の清楚な印象になります。

重要なのは、肌色を「一色で塗らないこと」。部位ごとに色味・明度・彩度を微調整することで、立体的でリアルな人物表現が可能になります。

肌色がくすむ?濁る?よくある失敗とその解決法

混ぜすぎて灰色になった、塗り重ねて濁った……これらは肌色表現におけるよくある悩みです。

肌色がくすむ主な原因は、

  • 補色を不用意に混ぜた(赤+緑など)
  • 塗り重ねすぎて紙の白が失われた
  • 筆やパレットに残った色が混ざった といったことが挙げられます。

対策としては、

  • ベースは3色以内で作る
  • 濁ったら白か黄でリセットする
  • 影色は別レイヤー・別の筆で重ねる などが有効です。

また、肌色を作る前に「どんな肌質を描きたいか」をイメージしてから色を調合すると、失敗しにくくなります。スウォッチを先に紙やキャンバスに描いて試すのもおすすめです。

まとめ

自然な肌色を作るには、「色の知識」「観察力」「繊細な塗り分け」がすべて揃ってはじめて成立します。

アナログでもデジタルでも、基本のレシピを押さえながら、人物の年齢・性別・背景に応じて微調整を加えることが重要です。単なるベージュではなく、“その人らしさ”が滲む肌色を、ぜひあなたの作品でも再現してみてください。

日々のスケッチや練習で、肌のニュアンスを描く目を育てることが、何よりの上達への近道です。

 

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